電験三種【法規】の試験では、事業用電気工作物・一般用電気工作物の法規制に関する条文の穴埋め問題が良く出題されます。
今回の記事は、事業用電気工作物・一般用電気工作物の法規制に関して、電験三種【法規】でよく出題される条文を抜粋して掲載いたします。よく穴埋めになる箇所を赤字で記載いたしました。
今回の記事を何度も読んで、電気工作物の法規制について、しっかりと覚えましょう!
事業用電気工作物
事業用電気工作物は、高圧の電気を使用したものであり、取扱方法を誤ると危険度が高いことから、電気事業法および電気事業法施行規則にて、
- 技術基準に適合するよう維持すること
- 工事・維持・運用に関する保安規定を定めること
- 主任技術者を選任すること
が定められています。
技術基準への適合
電気事業法
(事業用電気工作物の維持)
第三十九条 事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物を主務省令で定める技術基準に適合するように維持しなければならない。
2 前項の主務省令は、次に掲げるところによらなければならない。
一 事業用電気工作物は、人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えないようにすること。
二 事業用電気工作物は、他の電気的設備その他の物件の機能に電気的又は磁気的な障害を与えないようにすること。
三 事業用電気工作物の損壊により一般送配電事業者又は配電事業者の電気の供給に著しい支障を及ぼさないようにすること。
四 事業用電気工作物が一般送配電事業又は配電事業の用に供される場合にあつては、その事業用電気工作物の損壊によりその一般送配電事業又は配電事業に係る電気の供給に著しい支障を生じないようにすること。
電気事業法
(技術基準適合命令)
第四十条 主務大臣は、事業用電気工作物が前条第一項の主務省令で定める技術基準に適合していないと認めるときは、事業用電気工作物を設置する者に対し、その技術基準に適合するように事業用電気工作物を修理し、改造し、若しくは移転し、若しくはその使用を一時停止すべきことを命じ、又はその使用を制限することができる。
保安規定
電気事業法
(保安規程)
第四十二条 事業用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く。以下この款において同じ。)を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安を確保するため、主務省令で定めるところにより、保安を一体的に確保することが必要な事業用電気工作物の組織ごとに保安規程を定め、当該組織における事業用電気工作物の使用(第五十一条第一項又は第五十二条第一項の自主検査を伴うものにあつては、その工事)の開始前に、主務大臣に届け出なければならない。
2 事業用電気工作物を設置する者は、保安規程を変更したときは、遅滞なく、変更した事項を主務大臣に届け出なければならない。
3 主務大臣は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安を確保するため必要があると認めるときは、事業用電気工作物を設置する者に対し、保安規程を変更すべきことを命ずることができる。
4 事業用電気工作物を設置する者及びその従業者は、保安規程を守らなければならない。
「保安を一体的に確保することが必要な事業用電気工作物の組織ごとに」とは、簡単にいえば、「部署ごとに」といったニュアンスです。例えば、送配電会社でいえば、「送電」「変電」「配電」といった部署ごとに保安規定を策定するといったイメージです。
保安規定を定めるのは、事業用電気工作物を設置する者(持ち主)です。主任技術者ではありません。
主任技術者
電気事業法
(主任技術者)
第四十三条 事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、主務省令で定めるところにより、主任技術者免状の交付を受けている者のうちから、主任技術者を選任しなければならない。
2 自家用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く。)を設置する者は、前項の規定にかかわらず、主務大臣の許可を受けて、主任技術者免状の交付を受けていない者を主任技術者として選任することができる。
3 事業用電気工作物を設置する者は、主任技術者を選任したとき(前項の許可を受けて選任した場合を除く。)は、遅滞なく、その旨を主務大臣に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
4 主任技術者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督の職務を誠実に行わなければならない。
5 事業用電気工作物の工事、維持又は運用に従事する者は、主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければならない。
主任技術者免状の交付を受けていない者を主任技術者として選任できる例は以下のとおりです。
(1)設備の条件
- 出力500KW未満の発電所
- 電圧10,000V未満の変電所
- 最大電力500kW未満の需要設備
(2)主任技術者として選任できる人の条件
- 第一種電気工事士
- 一定条件を満たした電気関係の高校や教育施設を卒業した人
保安管理業務外部委託承認制度
電気事業法施行規則第52条2項
2 次の各号のいずれかに掲げる自家用電気工作物に係る当該各号に定める事業場のうち、当該自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督に係る業務(以下「保安管理業務」という。)を委託する契約(以下「委託契約」という。)が次条に規定する要件に該当する者と締結されているものであって、保安上支障がないものとして経済産業大臣(事業場が一の産業保安監督部の管轄区域内のみにある場合は、その所在地を管轄する産業保安監督部長。次項並びに第五十三条第一項、第二項及び第五項において同じ。)の承認を受けたもの並びに発電所、蓄電所、変電所及び送電線路以外の自家用電気工作物であって鉱山保安法が適用されるもののみに係る前項の表第三号又は第六号の事業場については、同項の規定にかかわらず、電気主任技術者を選任しないことができる。
一 出力五千キロワット未満の太陽電池発電所又は蓄電所であって電圧七千ボルト以下で連系等をするもの 前項の表第三号又は第六号の事業場
二 出力二千キロワット未満の発電所(水力発電所、火力発電所及び風力発電所に限る。)であって電圧七千ボルト以下で連系等をするもの 前項の表第一号、第二号又は第六号の事業場
三 出力千キロワット未満の発電所(前二号に掲げるものを除く。)であって電圧七千ボルト以下で連系等をするもの 前項の表第三号又は第六号の事業場
四 電圧七千ボルト以下で受電する需要設備 前項の表第三号又は第六号の事業場
五 電圧六百ボルト以下の配電線路 当該配電線路を管理する事業場
3 出力二千キロワット未満の水力発電所(自家用電気工作物であるものに限る。)に係る第一項の表第一号又は第六号に掲げる事業場のうち、当該水力発電所の保安管理業務の委託契約が次条に規定する要件に該当する者と締結されているものであって、保安上支障がないものとして経済産業大臣の承認を受けたものについては、同項の規定にかかわらず、ダム水路主任技術者を選任しないことができる。
一部の自家用電気工作物は、主任技術者を選任せず、電気管理技術者や電気保安法人などの外部業者に保安管理業務を委託することができます。大事な部分だけ抜粋します。
- 出力5,000kW未満、7,000V未満で連系する太陽光発電所または蓄電所
- 出力2,000kW未満、7,000V未満で連系する水力・火力発電所
- 出力1,000kW未満、7,000V未満で連系する発電所(太陽光・水力・火力発電所・蓄電所を除く)
- 7,000V以下で受電する需要設備
主任技術者の兼任
電気事業法施行規則第52条2項
4 事業用電気工作物を設置する者は、主任技術者に二以上の事業場又は設備の主任技術者を兼ねさせてはならない。ただし、事業用電気工作物の工事、維持及び運用の保安上支障がないと認められる場合であって、経済産業大臣(監督に係る事業用電気工作物が一の産業保安監督部の管轄区域内のみにある場合は、その設置の場所を管轄する産業保安監督部長。第五十三条の二において同じ。)の承認を受けた場合は、この限りでない。
工事計画及び検査
工事計画の認可
電気事業法
(工事計画)
第四十七条 事業用電気工作物の設置又は変更の工事であつて、公共の安全の確保上特に重要なものとして主務省令で定めるものをしようとする者は、その工事の計画について主務大臣の認可を受けなければならない。ただし、事業用電気工作物が滅失し、若しくは損壊した場合又は災害その他非常の場合において、やむを得ない一時的な工事としてするときは、この限りでない。
認可が必要な工事
出力20kW以上の発電所の設置工事であって、次のもの以外のもの
- 水力発電所
- 火力発電所
- 燃料電池発電所
- 太陽電池発電所
- 風力発電所
工事計画の事前届出
電気事業法
第四十八条 事業用電気工作物の設置又は変更の工事(前条第一項の主務省令で定めるものを除く。)であつて、主務省令で定めるものをしようとする者は、その工事の計画を主務大臣に届け出なければならない。その工事の計画の変更(主務省令で定める軽微なものを除く。)をしようとするときも、同様とする。
2 前項の規定による届出をした者は、その届出が受理された日から三十日を経過した後でなければ、その届出に係る工事を開始してはならない。
事前届出が必要な工事の例
- 受電電圧10,000V以上の需要設備の設置
- 受電電圧10,000V以上の遮断器の設置・取替、20%以上の遮断電流の変更
- 受電電圧10,000V以上、容量80,000kW・h以上の電力貯蔵装置の設置、20%以上の容量の変更
- 遮断器・電力貯蔵装置・計器用変成器以外の機器(電圧10,000V以上かつ容量10,000kVA以上または出力10,000kW以上)の設置、取替、20%以上の電圧又は容量もしくは出力の変更
- 出力2,000kW以上の太陽電池発電所の設置
使用前自主検査
電気事業法
(使用前安全管理検査)
第五十一条 第四十八条第一項の規定による届出をして設置又は変更の工事をする事業用電気工作物(その工事の計画について同条第四項の規定による命令があつた場合において同条第一項の規定による届出をしていないもの及び第四十九条第一項の主務省令で定めるものを除く。)であつて、主務省令で定めるものを設置する者は、主務省令で定めるところにより、その使用の開始前に、当該事業用電気工作物について自主検査を行い、その結果を記録し、これを保存しなければならない。
2 前項の自主検査(以下「使用前自主検査」という。)においては、その事業用電気工作物が次の各号のいずれにも適合していることを確認しなければならない。
一 その工事が第四十八条第一項の規定による届出をした工事の計画(同項後段の主務省令で定める軽微な変更をしたものを含む。)に従つて行われたものであること。
二 第三十九条第一項の主務省令で定める技術基準に適合するものであること。
「主務大臣の認可を得なければならない工事」、「事前届出が必要な工事」については、使用前自主検査を行わなければなりません。
実施に係る体制について、主務大臣が行う審査を受けなければなりません。
使用前自己確認
(設置者による事業用電気工作物の自己確認)
第五十一条の二 事業用電気工作物であつて公共の安全の確保上重要なものとして主務省令で定めるものを設置する者は、その使用を開始しようとするときは、当該事業用電気工作物が、第三十九条第一項の主務省令で定める技術基準に適合することについて、主務省令で定めるところにより、自ら確認しなければならない。ただし、第四十七条第一項の認可(設置の工事に係るものに限る。)又は同条第四項若しくは第四十八条第一項の規定による届出(設置の工事に係るものに限る。)に係る事業用電気工作物を使用するとき、及び主務省令で定めるときは、この限りでない。
2 前項の規定は、同項に規定する事業用電気工作物を設置する者が当該事業用電気工作物について主務省令で定める変更をした場合であつて、当該変更をした事業用電気工作物の使用を開始しようとするときに準用する。この場合において、同項中「事業用電気工作物が」とあるのは「変更をした事業用電気工作物が」と、「設置の工事」とあるのは「変更の工事」と読み替えるものとする。
3 第一項に規定する事業用電気工作物を設置する者は、同項(前項において準用する場合を含む。)の規定による確認をした場合には、当該事業用電気工作物の使用の開始前に、主務省令で定めるところにより、当該確認の結果(当該事業用電気工作物が小規模事業用電気工作物である場合であつて、その設置者が当該確認を委託して行つた場合にあつては、その委託先の氏名又は名称及び住所その他経済産業省令で定める事項を含む。)を主務大臣に届け出なければならない。
使用前自主検査を行う必要のない事業用電気工作物については、使用前自己確認を行わなければなりません。
使用前自己確認の結果は、使用開始前に主務大臣に届け出なければなりません。
一般用電気工作物は、一般家庭などで使用されるものなので、所有者が電気の専門知識を有していない場合がほとんどです。そのため、一般用電気工作物の保安の確保のため、所有者の代わりに電線路維持運用者が一般用電気工作物の調査の義務を負っています。
一般用電気工作物
調査の義務
(調査の義務)
第五十七条 一般用電気工作物と直接に電気的に接続する電線路を維持し、及び運用する者(以下この条、次条及び第八十九条において「電線路維持運用者」という。)は、経済産業省令で定める場合を除き、経済産業省令で定めるところにより、その一般用電気工作物が前条第一項の経済産業省令で定める技術基準に適合しているかどうかを調査しなければならない。ただし、その一般用電気工作物の設置の場所に立ち入ることにつき、その所有者又は占有者の承諾を得ることができないときは、この限りでない。
2 電線路維持運用者は、前項の規定による調査の結果、一般用電気工作物が前条第一項の経済産業省令で定める技術基準に適合していないと認めるときは、遅滞なく、その技術基準に適合するようにするためとるべき措置及びその措置をとらなかつた場合に生ずべき結果をその所有者又は占有者に通知しなければならない。
3 経済産業大臣は、電線路維持運用者が第一項の規定による調査若しくは前項の規定による通知をせず、又はその調査若しくは通知の方法が適当でないときは、その電線路維持運用者に対し、その調査若しくは通知を行い、又はその調査若しくは通知の方法を改善すべきことを命ずることができる。
4 電線路維持運用者は、帳簿を備え、第一項の規定による調査及び第二項の規定による通知に関する業務に関し経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。
5 前項の帳簿は、経済産業省令で定めるところにより、保存しなければならない。
電線路維持運用者とは、東京電力パワーグリッドや東北電力ネットワークといった、送配電会社のことです。
電線路維持運用者は、一般用電気工作物が技術基準に適合しているか調査をし、所有者または占有者に結果を通知するだけです。不具合箇所の改修は所有者または占有者が行わなければなりません。
まとめ
事業用電気工作物
- 技術基準適合義務がある
- 保安規定策定が必要
- 主任技術者専任または保安管理業務外部委託承認が必要
- 工事計画の認可または事前届出が必要な工事がある
- 使用前自主検査または使用前自己確認が必要
一般用電気工作物
- 電線路維持運用者に調査義務が課せられている
今回の記事は文章多めですが、何度も読んで頭に叩き込みましょう!
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