電気工作物には、「一般用電気工作物」、「事業用電気工作物」、「電気事業の用に供する電気工作物」、「自家用電気工作物」があります。
そもそもややこしいのに、さらに法改正により、「小規模事業用電気工作物」なるものも加わり、ややこしさマシマシです。
電験三種【法規】では、電気工作物の分類について問われる問題は、多く出題されています。
ここでは、電験三種【法規】で必要な電気工作物の分類について、わかりやすく解説いたします。
電気工作物とは
電気事業法第2条1項18号より
電気工作物 発電、蓄電、変電、送電若しくは配電又は電気の使用のために設置する機械、器具、ダム、水路、貯水池、電線路その他の工作物(船舶、車両又は航空機に設置されるものその他の政令で定めるものを除く。)をいう。
この文章を分かりやすく言い換えると、
電気工作物とは
- 電気事業のために人の手によって作られた工作物
- ただし、船や車両、飛行機に設置されるものは除く

天然の川や湖を水力発電所として利用している場合は、人の手によって作られた工作物ではないので、電気工作物にはならないよ

船や車両、飛行機は交通法や航空法等で規制されているので、二重規制とならないように、電気工作物から除かれているよ
電圧30V未満の電気的設備も、あまり危険ではないので電気工作物からは除かれています。
電気工作物の分類
電気工作物は大きく分けて「一般用電気工作物」、「事業用電気工作物」の2つに分けられます。
そして「事業用電気工作物」は「電気事業の用に供する電気工作物」と「自家用電気工作物」に分けられます。
上図は経済産業省のホームページより引用https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/setsubi_hoan.html
一般用電気工作物

一般用電気工作物の定義
一般用電気工作物とは
- 受電電圧600V以下
- 受電のための電線路以外の電線路によって構外の電気工作物と電気的に接続されていない
ただし、以下のものは一般用電気工作物にはなりません。
- 小規模発電設備ではない発電用の電気工作物と同一の構内に設置されるもの
- 爆発性若しくは引火性の物が存在するため電気工作物による事故が発生するおそれが多い場所であって、「火薬類取締法に規定する火薬類を製造する事業場」と「鉱山保安法施工規則が適用される石炭坑」に設置するもの
また、同一構内に設置される小規模発電設備は、以下のいずれにも該当していなければなりません。
- 出力が経済産業省令で定める出力未満であること
- 低圧受電であること
経済産業省令が定める一般用電気工作物となる小規模発電設備の出力とは
- 太陽光発電設備 ・・・出力10kW未満(法改正により変わった)
- 風力発電設備 ・・・該当なし(法改正により変わった)
- 水力発電設備 ・・・出力20kW未満
- 内燃力発電設備 ・・・出力10kW未満
- 燃料電池発電設備 ・・・出力10kW未満
- スターリングエンジン発電設備・・・出力10kW未満
- ただし、同一構内に複数の発電設備がある場合は、合計出力が50kW未満
以前は「小出力発電設備」という言い方をしていましたが、令和5年3月20日の法改正により、「小規模発電設備」と名称が変わっています。また、太陽光発電設備、風力発電設備については、一般用電気工作物となる出力についての規制が強化されています。
一般家庭や小規模の店舗等の100V,200Vで受電している電気設備が一般用電気工作物に該当します。
小規模発電設備と一般用電気工作物になる小規模発電設備の比較
小規模発電設備 | 一般用電気工作物となる 小規模発電設備 | |
太陽光発電設備 | 50kW未満 | 10kW未満 |
風力発電設備 | 20kW未満 | 該当なし |
水力発電設備 | 20kW未満 | 20kW未満 |
内燃力発電設備 | 10kW未満 | 10kW未満 |
燃料電池発電設備 | 10kW未満 | 10kW未満 |
スターリングエンジン発電設備 | 10kW未満 | 10kW未満 |
同一構内複数の合計出力 | 50kW未満 | 50kW未満 |

じゃあ、小規模発電設備に該当して、10kW以上50kW未満の太陽光発電設備と20kW未満の風力発電設備はなんなの?
小規模発電設備の
- 10kW以上50kW未満の太陽光発電設備
- 20kW未満の風力発電設備
は、「小規模事業用電気工作物」に分類されます。
事業用電気工作物

事業用電気工作物とは
- 一般用電気工作物以外の電気工作物で、
- 「電気事業の用に供する電気工作物」、「自家用電気工作物」に分けられる
電気事業の用に供する電気工作物
電気事業の用に供する電気工作物とは、
- 一般送配電事業
- 送電事業
- 特定送配電事業
- 発電事業
を営むために使用される電気工作物を言います。
主に、電力会社や送配電会社の設備と思ってもらってOKです。
自家用電気工作物
「事業用電気工作物」の中で、
「電気事業の用に供する電気工作物」を除いたものを
自家用電気工作物といいます。
具体的には以下のとおりです
自家用電気工作物とは
- 受電電圧が600Vを超えるもの
- 受電のための電線路以外の電線路によって構外の電気工作物と電気的に接続されているもの
- 経済産業省令が定める一般用電気工作物となる出力を超える小規模発電設備と同一の構内に設置するもの
- 爆発性若しくは引火性の物が存在するため電気工作物による事故が発生するおそれが多い場所であって、「火薬類取締法に規定する火薬類を製造する事業場」と「鉱山保安法施工規則が適用される石炭坑」に設置するもの
経済産業省令が定める一般用電気工作物となる出力を超える小規模発電設備の出力とは
- 太陽光発電設備 ・・・出力10kW以上(法改正により変わった)
- 風力発電設備 ・・・0kW以上(法改正により変わった)
- 水力発電設備 ・・・出力20kW以上
- 内燃力発電設備 ・・・出力10kW以上
- 燃料電池発電設備 ・・・出力10kW以上
- スターリングエンジン発電設備・・・出力10kW以上
- ただし、同一構内に複数の発電設備がある場合は、合計出力が50kW以上
一般用電気工作物の範囲の裏返しが、自家用電気工作物の範囲になります
工場や大規模店舗等、高圧6600V以上で受電している電気設備が自家用電気設備に該当します。
まとめ
一般用電気工作物とは
- 受電電圧600V以下
- 受電のための電線路以外の電線路によって構外の電気工作物と電気的に接続されていない
- 低出力でない小規模発電設備が同一構内にない
- 爆発・引火の危険性のある場所に設置されていない
事業用電気工作物とは
- 一般用電気工作物以外の電気工作物
電気事業の用に供する電気工作物とは、
- 電力会社や送配電会社の電気工作物
自家用電気工作物とは
- 電気事業の用に供する電気工作物以外の事業用電気工作物(一般用電気工作物の裏返し)
電気工作物の分類についての解説は以上となります。
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